今日もランクル日和

40代からはじめる素敵なランクル生活

私とモノづくり【第五話】

販売価格



量産化して販売する場合、一番悩むのは販売価格だろう。自分のモノをつくるだけなら考えもしなかったことである。適当に値付けをする人もいるかもしれないが、私はかなり時間を費やして値付けをしている。

色んな方法があると思うが、私の値付けは以下の通りである。

1.原価積算

材料・部品などネジ1本まで製品に必要なものを全て項目として上げる。その項目ごとに数量×単価で、製品1個あたりに必要な原価を計算する。エクセルで一度つくっておけば変更があったときにも一瞬で対応できる雛形となる。
本体の材料・部品以外にも塗装・仕上げ材、発送梱包材や治具制作費なども算入する。
私は趣味の延長で量産化しているので、副資材までは算入していない。工具や消耗品・燃料などはあくまで趣味の経費として考えている。
趣味だから人件費も入れなくても良いのだけど、製作時間を買っていただくと考えている。1個あたりの製作時間を計算してバイト代程度の単価を掛けて人件費としている。

2.市場調査

モノには相場というものがある。たとえ他には売ってないモノだとしても、その用途として使われているモノはあるのだ。例えば私が先日製作したドリンクホルダーはどうだろう?
「ドリンクホルダー」でGoogle検索してみると星の数ほどヒットする。安いものだと1個300円位から売られているようだ。社外汎用品ならば1000~2000円あたりの商品が主力だと思う。もちろんつくりはそれなりだし機能も限定されるが、ほとんどの人はこんな汎用品を購入したことがあるだろう。私も何度も購入したことがある。最近のクルマならばドリンクホルダー数個は標準装備だから追加で買う必要もないかもしれない。

さらに「ランドクルーザー70 ドリンクホルダー」で検索してみる。ランドクルーザー70にはドリンクホルダーが標準装備ではない(一部あるけど使いにくい)から社外専用品が数多く販売されている。ここで注目したいのは、少し前に流行ったドアにつけるアームレスト付きのドリンクホルダーである。確か最初はOneStoneというメーカーが30000円位で販売していた。アームレストという機能があるとは言え、ドリンクホルダーとしてはかなり高価だろう。しかし多くのランドクルーザーオーナーが購入したようだ。シンプルな構造なので即行で中華模倣品が出てしまい、今では10000円前後で模倣品が買えるようになっている。それでも社外汎用品よりも高価である。

つまりランドクルーザー70というマニアックなクルマのオーナーはモノにこだわる人が多く、多少高価でも琴線に触れるモノならば購入するということ。これは小規模のモノづくりのチャンスである。と言うか、モノにこだわるマニアがいるジャンルでないと勝負できないと言って良い。

3.価格決定

上記の結果を踏まえて、販売価格を決める。原価積算価格(人件費除く)が最低価格となる。これ以下で販売すると赤字である。売れば売るほど貧乏になっていくので恐ろしい。このラインは譲れないので、市場調査した社外汎用ドリンクホルダーのようなお手軽価格にするのは無理なのだ。本当は多くの人に使って欲しいけど、こだわりマニア向けに特化するしかしかない。ターゲットを絞ったマーケティングが小規模販売の常套と言える。

もちろんコストダウンは何度も考えて実行している。コストダウンについてはまた詳しく話をしようと思う。品質は維持しつつ無駄なものは省いて原価を下げることは常に考えている。

最終的には、自分の経験と感覚を信じて販売価格を決めている。そもそも自分が欲しいモノをつくっているので、そのモノをいくらなら購入するだろうと自問自答するのである。私の人件費は圧縮されることなるけど、これで飯食ってるわけではないのでまあ良いかとなる。どこの馬の骨とも知れない私の製品を買っていただけるインフルエンサーの方々には本当に感謝しかないのだ。

モノづくりにおける販売価格考察

私はモノづくりで飯食っていた時期があるので、販売価格の計算もシビア考える。お店に卸したり、場所を借りて売るならば、さらに経費が上乗せされるのだ。多くのモノづくり・販売の現場を見てきたけど、本当に儲けがあるのかなあ?と思うような低価格であることも多い。もちろん売れなければお金は入ってこない。確かに一般の方には海外でつくった大量生産品も、日本でつくった小規模生産品も同じなので、価格が安いモノを選ぶだろう。だからこそ小規模のモノづくりではターゲットを絞ったニッチ商品でなければ成立しないと思うのだ。

現在はどの業界も値上げばかりである。周辺アジアの所得は増加し続けているのでいつまで海外生産のアドバンテージがあるかどうか分からない。現在のようなダンピングができなくなったとき、お給料の全く上がらない日本でのモノづくりが復活するかもしれない。私が語らなくても真剣にモノづくりされている方はブレずに良いモノをつくり続けているのだ。私は製作者に正当な対価が支払われるシステムであり続けること願うだけである。