今日もランクル日和

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私とモノづくり【第六話】

コストダウン



コストダウンと聞くとネガティブなイメージだと思う。ユーザーにとっては安くて高品質な方が良いに決まっている。モデルチェンジ時に分かりやすいコストダウンがあるとガッカリするだろう。

立場が変わると見方も一変する。自分でモノづくりをするとコストダウンがいかに難しく地道な積み重ねによることが分かるからだ。

私のコストダウン方法をいくつか書いてみる。

1.材料の変更

これは効果が大きいけど、ユーザーにも分かりやすいので諸刃の剣と言える。特に質感を重要視する部分の木材などは勇気がいるコストダウンである。安い材料には理由がある。見た目・強度・性質などが劣るから安価なのだ。

オーク(楢)→ラバーウッド(ゴムの木)の変更だとおそらく材料原価は半額程度になると思う。強度は下がる、見た目や手触りは全く違う。でもこだわりがない人には同じ木材にしか見えないだろう。見隠れ部に使うなら影響も少ない。

地味なところだとネジを ステンレス→鉄クロメート→鉄ユニクロ に変更する。水の掛からない室内だとユニクロメッキで十分である。もちろん見える部分に使うならば見栄えは要検討であるが機能的には問題ない。ネジの単価は微々たるものだが積み重ねなのである。もちろん強度が必要な場所のネジはケチってはならない。


塗料などの仕上材料も機能を満たす安価なモノを常に探している。これは実際に使ってみないと分からない。安いからといって耐久力がなくては使えないのでカタログだけの判断は難しい。

2.サイズの変更

材料を一からつくることはない。例えば木材を山から切り出すこともないし丸太を製材することは普通の人は縁がない。プラスチックも金属も大規模な工場がないとつくることができない。一般に材料を流通させるときには規格寸法がある。無限大の材から自由に切り出せるわけではないのだ。

例えば合板の規格寸法は910×1820mmがサブロクと呼ばれる基本サイズである。他にもシハチなど様々なサイズがあり、製作する部材のサイズにあわせて購入する。この規格寸法から必要な部品を無駄なく切り出すことが重要となるのだ。これを歩留まりと呼ぶ。

職人は歩留まりを常に考えている。特に量産する場合は原価が大きく変わってくるためパズルのような作業が必要になるのである。また材料・切り出す刃物・要求精度などで変わってくるので知識・経験値も必要になってくる。


強度が確保できるならば、部材は小さく薄いほうが原価を抑えることができる。しかし小さく薄く加工する手間賃をかけるよりも、規格寸法のそのままのほうが安い場合もある。特に厚さは規格寸法のまま使う方が良い。わざわざ厚さを変更するのは機能・収まり・デザイン上やむを得ないときだけである。

3.仕上げの省略

見えないところまでこだわる…なんてキャッチコピーはよく見るけど、これは半分本当である。設計の細かなこだわりは製品に直接現れるものではないから、見えないところのこだわりと言える。しかし製品の見えない部分の仕上げは省略することがほとんどである。

家具の見える部分はカンナ掛け・サンドペーパーで下地づくりをするけど、見えない部分はチップソーで機械加工しただけ、機械カンナ仕上げまでだったりする。当然見えない内側は塗装しない。これはコストダウンだけの理由ではないけど。

仕上げは結構手間がかかるのだ。塗装するなら下地もつくらなくてはならない。もちろん仕上がりレベルによって下地も省略できるのだけど、仕上げなしの素地のままが一番コストはかからない。

4.収まり・工程の変更

これが一番難しく悩んでしまうことである。上手く決まると品質は落とさずにコストダウンできる。しかもモノづくりマニア以外には気づかれないのだ。

私のモノづくりの基本のひとつは、できるだけシンプルな構造にすること。少ない部材で機能を成立させること。機能が兼ねられる部材はひとつの部品にしてしまう。逆につくりやすさを重視してあえて分割することある。ややこしい話だけど製作難易度も重要なのだ。難しい細工は量産には不向きである。

美しさが求められない部材はできるだけ長方形の組み合わせとする。直線や直角のほうが加工しやすいし歩留まりが良いからだ。無駄な部分は切り詰めることが基本だけど、斜めにカットしたり中抜きするのは手間はかかるだけで材料原価は変わらないのだ。

設計するときは加工する順番も考えている。量産するときは同じ作業をまとめて行ったほうがトータルの時間は短くなる。その作業をするための準備・片付けも必要だし、同じ作業を繰り返していると一時的に慣れてスピードアップするためである。



・・・と全ては書ききれないのだが、量産モノづくりでは小さなコストダウンの積み重ねで販売価格を下げているのである。