今日もランクル日和

40代からはじめる素敵なランクル生活

私とモノづくり【第四話】

材料について



材料の話は幅広く、切り口をどこにするか悩む。どうでもいい話をすると、私は木が好きである。家具職人だった頃は毎日触れて加工していたし、いまでも家具を選ぶときは木にこだわって選ぶことが多い。長年関わってきた経験があるので、見た目や手触りで樹種が分かるし、強度も理解しているつもり。

しかし木は量産化を考えると難しい材料なのだ。一言でいうと木は均質ではない材である。樹種や個体差によって強度も重さも違う。木は繊維でできているので、方向によっても強度が違う。経験者なら分かるが木の繊維方向をよく考えて使わないと簡単に破損してしまう。木の組み方は古くから伝えられセオリーが確立されている。まずは基本を学ぶことが必要になる。

ではなぜ取り扱いが難しい木を使うのか。それは木目の美しさや手触りの良さを求めるからである。他の材料ではどうにもならないのである。プラスチックに木目印刷ではダメなのだ。最近は印刷も精巧になり遠目では見分けもつかないけど経年劣化は避けられない。無垢の木材は木目が消えることも無いし長年使うことでさらに風合いを増すことができる。

モノづくりでは材料ありきの場合も多い。木の風合いが目的の場合は木材以外の選択はないだろう。あとは必要な強度を得るために樹種の選定や部材の組み方や幅厚を考えていく。

木はテクスチャーが強すぎる場合もある。好みもあるけどマニアに珍重される玉杢などは相当に見た目の印象が強い。インパクトのあるモノはその空間も支配してしまう。もちろん使い方次第なのだが、なかなか難しい材料だと言える。

私が最近つくるモノは、自動車に取り付けるモノばかりなので、あえて木材を避けている。これは私の好み・考えであるから良し悪しの話ではないことを先に書いておく。
木材を使うと古い英国車のイメージもあり、どうしてもラグジュアリーな雰囲気になってしまう。私はランクルを道具として考えているので、なるべく純正に使われている材料を使い、存在感を抑える仕上げにしているのだ。
構造材として木材を自動車に使うには強度不足になる場合も多い。特に細く薄い部材は無垢材だと難しい。また無垢材は湿度に影響され狂いも大きいので合板のほうが適していることもある。

金属は、体積の割に強度があるので自動車の主要材料である。均質な材で方向性もない。薄材は曲げることも容易で加工しやすい。ただし鉄は1mm、アルミは2mmを超えると手加工は厳しくなる。切るのも曲げるのも大変である。金属は基本錆びるので、特に雨に濡れる外部に使用するなら防錆処理を施す必要がある。
メタリックな素地の質感を活かすか、塗装仕上げなどで覆ってしまうかはモノによって使い分ける。私は使い込んで塗装が剥がれ金属素地が露出する雰囲気が好きである。

一般的に流通している金属材は規格品である。金属加工の内容によっては大規模な機械が必要になるので個人製作は難しい。よって規格サイズに合わせて設計することが多い。手加工できる薄板・棒・パイプなどの規格品を使う。イレクターなどの既製品はシステマチックな部品がたくさんあるので、組み合わせ次第で目的の機能が得られることもある。部品注文だけで完結するので量産化も容易である。

金属で気をつけなければならないのは電蝕だろう。水がかからない室内なら問題ないことが多いが、屋外で使う場合は異種金属を接触させて水分に浸かると腐食してしまう。ステンレスは錆びないからと安易に鉄部品との接合に使うとかえって腐食させてしまうのだ。

プラスチックもよく使う材料である。現在の工業製品の主力だろう。種類も非常に多く、素人が全てを把握するのは難しい。プラモデルなどにも使われるスチロール樹脂やABS樹脂は比較的手に入れやすく加工も容易だ。プラスチックは均一な材で基本的に方向性はない。金属よりも柔らかく強度は低いが、軽く腐食しないことがメリットである。ただし紫外線に弱い材もあるので屋外で使う場合は樹脂の選定や保護も必要になる。

木や金属と違い透明な材があるのも大きな特徴だろう。アクリルはガラスよりも軽くて加工も容易である。透明度もアクリルのほうが高い。

エンジニアプラスチックと言われる耐熱性や強度の高い樹脂もある。機能として必要ならば選択するが、普通に売られている材ではなく少量で購入することが難しい。素人の工作程度なら使うことはほとんどない。

プラスチックは木と同じように加工することができる。さらに熱で溶かして加工することできる。透明のプラバンに絵を書いて、トースターでチンして小さく縮ませてキーホルダーなどを作ったこともある人もいると思う。ただし溶かす加工は制御するのが難しい。

他にも布や紐などの繊維や、粘土やゴム、石やセラミック・・・とキリが無い。
要は適材適所ということである。用途と知識と経験値とコストで材料を決めるのだ。実物を触って加工してみないと分からないことも多い。材料選定に失敗することなんて日常茶飯事である。当然答えはひとつではないし、完成したモノの機能に満足し長い間使うことができれば良いのだ。見た目の質感にもコストが許す限りこだわりたい。