とうとうナイフに手を出してしまった
これまで野宿やファミリーキャンプをしてきた。便利な道具を使ったり整備されたオートキャンプ場ならばナイフが無くても困らない。料理には包丁を使うし、薪を購入してもすでに適度な大きさに割ってあるのだ。
今流行りのブッシュクラフトをやってみたいというよりは、単純にナイフがカッコいいから欲しくなったのだ。本来なら行為を行うために道具を買うのであるが、今回はナイフを使って何ができるか考えることになるだろう。漠然とイメージはある。そこらへんに転がってる木を加工して道具を作ったり、薪を燃えやすく加工してみたいのだ。
実は、前職は家具職人であった。だから今でもカンナやノミといった手工具をたくさん持っている。刃物の手入れも日課となっていたから砥石もたくさん持っているし、一般の人よりは研ぎも上手だと思う。
結局、根性も腕もなく飯の食えなさに絶望して夢あきらめた訳です。まあ私の話はどうでもいいですね。ともかく刃物の扱いは多少心得があるということ。
はじめての本格ナイフ
しかしナイフは購入したことがない。レザーマンなどについてるナイフはいくつか持ってたがほとんど使うことがなかった。木工に使う切り出し刀や彫刻刀は持ってるが、いずれも片刃であり、いわゆるブッシュクラフトなどに使われるナイフとは形状もつくりも異なる。
右も左も分からないときは、まず定番のモノを買うことにしている。もちろん自分が気に入らないモノは買わないが、定番品は多くの人に愛されているので、デザインも美しいモノが多いのだ。
ナイフだとモーラやオピネルというメーカーが定番である。私がやりたいことをするのは、モーラナイフのほうが向いているだろう。
モーラナイフを購入
ということでコレをポチった。
こんな感じのブリスターパックである。2500円のナイフなので簡易包装だ。
ラバーグリップで高級感は皆無だが、それが良い。シンプルな形状で小細工がないところが潔い。道具として快適に使えれば良いのだろう。
プラスチックシースもカッコよく見えてくるから不思議だ。
モーラナイフの現状
箱出しでもコピー用紙は普通に切れる。しかし引っ掛かりがあるし、角度によって切断面が荒れることがある。
まずはこのまま使ってみれば良いのだけど、悪い虫が騒ぎだすのだ。「とりあえず研いでみようよ。もっと切れるようになるぜ」
私のモーラナイフ Companion Heavy Duty MG には、セカンダリーベベル(マイクロベベル)と言われる小さな切刃が付いている。個体によっては無いものもあるらしい。
15倍のルーペでみる。セカンダリーベベルがあるのが分かる。大きな切刃(プライマリーベベル)には機械切削加工の跡が残っている。どちらのベベルも15倍のルーペで見ると、ずいぶんと粗いと感じるだろう。2500円の量産品なのだからこれ以上の研ぎを求めることは無理だ。とりあえず紙くらいならスパッと切れるレベルで仕上げてある。
ちょいと脱線
ちなみに私はこのルーペをずっと使っている。
シンワ測定 ルーペ Q 高倍率 スーパーミニ 15倍 10mm 75543
- 出版社/メーカー: シンワ測定(Shinwa Sokutei)
- メディア: Tools & Hardware
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研いだ刃先を見るのに適している。水に少々濡れても大丈夫だし、安い割に良く見えるのだ。
今はこんな小さな顕微鏡が安価に買えるようだ。いい時代ですね。昔は高価なマイクロスコープしかなったなあ。
だだし機動力はルーペのほうが高い。刃先を確認して研ぐの繰り返しなのだ。腰据えて顕微鏡で刃先を見るのは、余程精密な研ぎをするときだけ。突き詰める方はカンナの削り屑が数ミクロンというレベルで常人には無縁の世界だ。通常の研ぎはルーペで充分。
モーラナイフの研ぎ
切刃について考える
ナイフビギナーであるが、とりあえずネット上で見られる情報を集めて読んだ。もちろん膨大な量があるので、かい摘んでいる。
ナイフにセカンダリーベベルは必要と多くの方が語られている。特に薄いナイフは、セカンダリーベベルを落としてフルスカンジベベルに削ってしまうと、切れ味は鋭くなるけど耐久力が極端に落ちてしまうようだ。
上図はナイフの断面である。左図はセカンダリーベベル付き、右図のフルスカンジにするために、中図の青ハッチ部分を削る必要がある。
私が付き合ってきたカンナやノミには、基本セカンダリーベベルを付けることはない。(長切れさせるため意図的に少し丸刃にすることはある)なぜならカンナやノミは、ナイフに比べて分厚いからだ。削る木にもよるが、おおよそ27~30°くらいの角度に研ぎ上げる。
モーラナイフをフルスカンジにするとこうなる。(単位mm)
数字は断面の位置によって変化するが、大きく異なることはないだろう。上図の通り刃先角度は27°を超えるのだ。つまり木を削るときの耐久力は確保されていると言える。堅木は少々厳しいかもしれないけど、使い方によっても変わるだろう。
薪をガンガン割るのと、木の表面を削るのでは刃先の負担が全く違う。結局使ってみないと分からないことだ。とりあえずフルスカンジにして使ってみて、すぐに刃先がダメになるようなら、改めてセカンダリーベベルをつければ良いだろう。
モーラナイフ Companion Heavy Duty MG は分厚いから、フルスカンジでも大丈夫と言う人も多い。かなり期待しているけどね。
フルスカンジに加工する。
今回は、人造砥石(セラミック砥石)をつかう。
シャプトン 刃の黒幕 #1000、#2000、#5000
#1000で少し削ってみた。モーラナイフはそんなに硬い鋼ではないけど、全鋼なのでかなりしんどい。フルスカンジになるまで削るには相当時間がかかる。もちろん根気よく研削すれば可能だが、ここは便利な道具に頼って時間短縮する。
ダイヤモンド砥石である。私はコレを使っている。
私は替刃とアルミ台を別々に購入して自分で貼り付けている。それのほうが安価だし、アルミ台は平面出しをして精度を上げてから替刃を貼り付けている。
今はもっと安価なダイヤモンド砥石があるが、昔は選ぶほど種類がなかった。ダイヤモンド砥石は趣味に使う程度なら、ほとんど減らない。減らないということは平面度も変わらないので、精度が高いほうが良い。
用途は、大きく切刃の角度を変えたり、刃先の欠けを修正するときに使う。また他の砥石の平面出しにも使う。そのため粒度は#600を使っている。
ダイヤモンド砥石は、普通の砥石に比べて恐ろしく削れるのだ。だから普通の研ぎのときには使わない。速く削るだけなら荒砥石(#120~320)でも良いのだが、粗い砥石はより深いキズが入るので、その後のキズ消しも大変なのだ。それにダイヤモンド砥石は平面が崩れることがないから正確に削ることができる。
ダイヤモンド砥石も水をつけてから研削する。普通の砥石のように吸水性は無く空研ぎでも研削可能だけど、ダイヤモンド剥落防止に充分に水で流しながら使い、強く押さえないようにする。
ダイヤモンド砥石で削る
箱出し状態。写真が下手で分かりにくいけど、セカンダリーベベルと機械切削加工跡がある。
ダイヤモンド砥石で切刃を削った状態
セカンダリーベベルが無くなった。なるべく真っ平らに仕上げたつもりだけど、カーブした部分が難しい。こだわっても終わらないので、適当なところで妥協する。
ダイヤモンド砥石の欠点のひとつは、錆びやすいことだ。研いだところから、速攻で錆びてくる。だから研削が終わったら速やかにセラミック砥石で研ぐか、油などを塗って防錆しなければならない。
長くなったので、今日はここまで。
次回は、セラミック砥石 #1000~ 黒錆加工もするかも(未定)
乞うご期待。